はじめに
いつもFPオフィス「ライフデザイン」のブログをお読み頂きありがとございます。今回は「アフターコロナの金融市場と私たちの暮し」ということで、今後の金融市場などの変化と私たちの暮しへの影響をまとめて見ました。
新型コロナの影響の経緯
新型コロナに関する事象や対応と日経平均の関係は次の図のようになっています。
この図を見ると、WHOがパンデミック宣言をした頃が一番の底で、約36%の落ち込みでした。
しかし、その後の4月17日には、相次いで各国が経済支援対策を表明し、アメリカ:2兆ドル(約210兆円)、イギリス:3500億ポンド(約3兆円)、ドイツ:7500ユーロ(約90兆円)、日本:108兆円。そして更に、米国は利下げと国債の無制限の買い入れを宣言、日本も12兆円ETF買い、国債の無制限買い入れを宣言し、230兆円の事業規模の補正予算を組みました。
それらの施策が功を奏し、6月上旬には下落前の95%(日経平均が23,000円超え)まで戻しました。世界全体で見ると8兆ドル、GDPの10%に及ぶ経済支援規模です。
なぜ金融市場は急速に回復したのか
以前に、もうひとつの「自衛官生活支援会」のブログで「新型コロナショック下で、なぜ株式相場は高騰するのか」 と題して書きましたが、全世界で金融緩和が行われマネーが世界中に溢れかえっています。その溢れいているマネーが株式市場に向かったのだと考えられます。
そのようなことから、経済の実態を全く反映していないと言ってよいでしょう。金融市場と経済は全く別物と考えるべきではないでしょうか。
過去との比較は?
金融市場が戻るのにどのくらいの時間がかかったか?
過去のリーマンショック、SARS、MERSと比較して見ましょう。COVID-19とは新型コロナの正式名称です。日数は営業日です。
この図を見ると、リーマンショックは1093営業日(4年と6か月)、MERSは501営業日(2年)、SARSは121営業日で元の相場まで戻っています。今回は約4ケ月で95%まで戻しました。
今までの感染症との比較
◎SARS
・2002年から2003年に掛けて、中国南部を発生源。
・中国、アメリカ、カナダ、フィリピン、ベトナム、台湾、シンガポールなど37か国で流
行し、916人が死亡。
・2003年7月にはWHOが封じ込め宣言を行い、急激に収束。
◎MERS
・中東で発生し2012年頃には確認、2013年にはWHOが警告。
・その後、韓国で2015年の5月~6月にピークを迎え年末までには落ち着く。
・2015年6月には感染予防に大きな効果があるスプレー剤が開発され、大きく予防に貢献。しかし、封じ込めは出来ておらず、その後も毎年感染者が報告。
◎新型コロナ
・2019年12月、中国の武漢で発生。
・2020年3月11日、WHOパンデミック宣言。
・第2次、3次流行の可能性
今回が今までとは違うのは、世界的な規模での感染が起きたことです。これに伴い、各国が鎖国政策を取り、人や物の移動が停滞したことです。また、今回は世界規模での発生であったため、主要国が緊急経済対策、金融緩和を行い膨大なマネーが市場に注入されたことです。そのことにより、金融市場は早期に回復したのです。
世界の金融市場
これは、2020年6月26日現在の世界の金融市場の状況(主要株式指標)を表したものです。
香港はコロナ以外の要因で振るわないようですが、中国、韓国、ベトナム、ドイツ、日本、アメリカが底値からかなり戻していますね。以外に振るわないのが、シンガポール、英国、フランスなどで、意外に良いのがブラジルです。英国は早い時期に大規模な金融政策を打ち出したにも拘わらず、あまり良くありません。EU離脱の影響もあるのでしょうか。
ポイントは新型コロナショック前は、各国とも右肩上がりの状況でしたが、新型コロナショックの後は国によって大きく違うことです。
大規模経済対策の光と影
大規模経済対策は金融市場には功を奏しましたが、その光と影をどのようなものでしょうか。
金融市場へのアクセス差における格差の拡大
新型コロナショックへの経済対策は、大規模で迅速であったため、金融市場への影響は各国の差はありますが、リーマンショックの時に比べれば、早期に戻りつつあります。しかし、実体経済を反映していないことが問題です。実体経済とは異なるということは、金融市場にアクセスできる人たちは利益を得ることが出来ますが、そうではない人は実体経済の影響を色濃く受けてしまいます。すなわち、今まで以上に格差が生じることになります。
インフレ懸念と金融市場の膨張
世界GDPの10%という膨大なマネーが市場に溢れたため、間違いなく現金の価値は下がります。コロナショックが収まったあとに、各国の中央銀行が膨大なマネーを回収する必要がありますが、もし、上手く回収できなかった場合は、インフレになる可能性があると思います。また、日本は大きな財政赤字を抱えているので、万が一、インフレになり金利が上昇すると財政が破綻します。・・金利と債券は逆の動きをしますので、金利が上がる時には国債の値が落ちます。しかし、日銀が国債を自ら買い支えるので、国債の値が下がることはほぼなく、実態としては金利が上がることは考えにくいです。
日本においては、現金の価値は下がりますが、金利は上がりづらいので生活をする上では、物価があがることは少なく困窮する事態に陥る可能性は低いと思います。しかし、膨大な余剰マネーは金融市場などに流れ込み、金融市場と経済が乖離し、金融市場の膨張(インフレ)が起こるのではと思っています。すなわち金融市場のインフレともいえる現象が生じるのではないかと思います。
新興国の影響が波及する可能性
現在、先進国が金融緩和を行いましたが、同様に新興国でも金融緩和を行い、中央銀行が国債を買い取りを始めた国もあります。本来、中央銀行が国債を買い取るのは「禁じ手」なのですが、多くの国で行われています。しかし、新興国は現在、原油や自動車などの輸出が急減し、外貨を稼ぐ手立てがなく、外貨不足に直面しおり、国の信用力の指標とも言える外貨準備(ドル)が新興国の各国で減少しています。このようなドル不足の状況下で、新興国は2021年末までにドル建ての償還・返済債務が7200億ドルあり、債務危機になればトルコや中南米の最大の貸し手である欧州の金融機関にも波及する可能性があります。
どのような行動をとれば良いのか
色々と述べて来ましたが、生活者の私たちはどうすればよいでしょうか。結論から言うと資産を分散することが大切だと思います。現金は生活費の1年分を確保して、あとは、金融市場からの恩恵を受けるために株式、現物資産の代表格の不動産(RIET含む)、価値の変わらない金などに分散することが必要ではないかと思います。
大規模な金融緩和で膨大なマネーが市場に溢れている時代には、今まで以上に現金だけを持ち続けることは、その価値が大きく下がる可能性を秘めています。そのような時代には、資産の分散が今まで以上に必要になるのではないでしょか。
まとめ
新型コロナショックで、経済は今までにない打撃を受けています。そして、各国の迅速で大規模な金融緩和で金融市場は持ち直しています。しかし、実態経済を反映してはおらず、このショックが落ち着いた折には、色々な悪影響が顕在化することも懸念されます。
このような時、生活者としての防衛策としては、資産を分散させ守ることが大切ではないかと思います。現金により1年間くらいの生活を確保しつつ、金融市場の恩恵を受けるために株式、現物資産の不動産(REIT含む)そして価値が変わらない金などに分散することにより生活を防衛することが出来るのではないかと思います。